「ピピピピ。ピピピピ。」
深い眠りからスッと目覚め腕に着けたG-ショックのアラームを止めると、フカフカのベッドから起き上がりカーテン越しに外の様子を覗おう。
日が高くなればいつものように力強い日差しが差し込むだろうが、今朝もお決まりの曇り空。
今は朝一のサーフィンをしていれば軽いラウンドをこなしてこられる程度の時間。
今日は今までのトリップに比べとてもゆっくりとした朝を迎えることができた。。。
Naoと車をシェアしていること、またまだ自分用のボードがきちんと手元にないことなどから、今朝はもともとサーフィンは不可能な状況だ。
慌てることなくシャワーを浴びると、ちょうど出来たばかりの熱いコーヒーを一杯、いつでも出発できる準備を整えながら頂こう。
部屋を出ると廊下にタイミングよくマニの姿。
おはようの挨拶をして状況を聞いてみると、マニは一足先に準備を済ませて間もなく会場に向かうそうだ。
スッと手渡させた一枚のチケット。
首から下げられるように紐がついた四角いビニール・ケースには「mndalacustom shapes stuff」の文字。
うれしいことに自分達のためにもスタップ用のパスを準備してくれているではないか。
パスを首から提げてみるとグッと気分も盛り上がり、一気に100%のヘルプ・モードになってくる。。。
Naoの運転で食料や水分など必要最小限の買出しを済ませるとベンチュラのビーチに面した会場へ向かおう。
ゲートでスタッフパスを見せながら朝の挨拶を交わすと、さらに奥にあるスタッフ用パーキングに入り、空いたスペースに車を止める。
ふっと気配を感じ前に止まった大きなバンを見上げると、今まさにウェットに着替えボードを準備しているのは、ペネトレーターを抱えたジョン・ペック氏だ。
さっそく車から降り写真を撮らせていただいても良いか訪ねると、「丁寧に聞いてくれて、ありがとう。」と笑顔が帰ってきた。
驚いたことにNaoには彼と共通の友人がいるらしくいきなり会話が弾んでいる。。。
まだ開場前の場内は、昨日のうちにすっかり準備完了したブースから、まだこれから現地入りするのかまったく手付かずのところまで、各ブース思い思いのペースで準備が進んでいる。
目的を考えれば当たり前のことだが、どのブースもこれでもかと言うくらいにボードをメインにディスプレイしているそんな中、マニのブースはちょっと異色の空間に仕上がっている。
まずマンダラ・カスタム・シェイプのブースには、ブランド名を大きく表記するポップなどは見当たらない。そしてブース正面にドンと構えているのは、ボードではなくダイニング・サイズの大きなテーブル。
その上には小さな四角いスペースが積み重ねられた木製のディスプレイラックがあり、有名アーティストの作品、アートブック、ポストカード、フォトから自然の造形美が美しい乾燥したウニまで綺麗に飾れている。
床には大きな丸いラグが敷き詰められている上、正面左には木製の椅子が置かれているので、なにやら彼の家のリビングに遊びに来ているようにさえ感じられるディスプレイだ。
こういったところからも彼のセンス豊かでアーティスティックな一面をヒシヒシと感じてしまう。。。
もちろん彼のシェイプする素晴らしいボードたちも忘れてはいけない。
主役であるはずのボードは正面右に綺麗に並べられており、タイラー・ウォーレンのパーソナルボードやワックスが塗られたマニのテスト・ボードなどが、真新しいボードと共に並んでいる。テスト中のボードや映像に出てくるボードたちの存在は、そのリアリティーからボード性能などの説明にもグッと深みを増してくるはずだ。。。
真っ黒に日に焼けたミスター・ウィングナットが携帯片手に目の前を横切ったかと思えば、素晴らしい非対称のデザインのボードを抱えたエクストローム氏がスイフトのブースへ歩いてゆく。。。
まだオープン前の会場をサクッと散策してみよう。まず気になってしまうのははやりマーク・アンドレイニ、ブライアン・ヒルバーズやカーク・プットナムといったハルの世界では重鎮といえる方々が共同で出展しているブースだろう。
ファインラインのツインフィン&フィッシュテールのハル、ストリンガーレスのスタンドアップ・ベロやパラボリック・ストリンガーのハルなどはどれもユニークで見ているだけでもワクワクしてしまう。。。
またレイノルド・イェイター氏から受け継がれるアンドレイニのスプーンは乗り味の素晴らしさが想像できる名品という感じだし、マーク・アンドレイニ氏の理論で乗りやすく仕上げられているハル、ブァッケローは日本の波にもフィットしやすいだろう、優しいカラーリングが美しいハルだ。
ほかにもヒルバーズ・プットナム・デザイン、アンダーソンなど素晴らしいボードばかりで目移りしてしまう。。。
これからの2日間でたくさんの名立たるシェイパーたちが行なうシェイプの全工程を見ることのできるだろう、透明のシートで囲まれたシェイプルームでは、レイノルド・イェイター氏とマーク・アンドレイニ氏がなにやら語りこんでいる様子。
ザモラ・サーフボーズのブースでは、ボランのコントラストが美しい9’0”シモンズがその存在感を見せ付けていた。
しっかりとした下積みがある上、マリブ・ローカルという恵まれた環境でスタートした若干25歳のシェイパー、イアン・ザモラだが、ディスプレイスメント・ハルはもちろんミニ・シモンズからアライヤまで個性豊かなボードをハンドシェイプしてくれる。
今後の展開が非常に楽しみな若手アップカマーの一人だろう。
マニともすでに交流があったりするので、なになら運命のようなものを感じたりもしてしまう。。。
開場後もマニとブースでジェンガをしながらのんびり構えていたのだが、気がつけば徐々にブースに立ち寄る人々が増えてきた。
いつも細かいところにまで気がつくNoaの誘いで買出しに出発しよう。
ミネラル・ウォーター、ジャンク・フード&テカテを2ケース!
持ち帰ると合間を見つけマニがテーブルの下にさりげなくアイスボックスをセッティング。
さっそくハルの重鎮達みんなに紙コップに注がれたテカテを持っていったのだが、マニが戻るよりも先に満面の笑みのブライアンがおかわりのテカテ求めて現れた。。。笑
2つのシェイプルームでは順番に有名シェイパーのシェイプが見学できるし、出展ブースもメジャーどころが多く並べられたボードたちとそのシェイパーの方々を見学するだけでも、下手な美術館よりも見ごたえがあり素晴らしいイベントであることは一目瞭然だろう。
ただし、最先端のテクノロジーがあったり、エコロジーに徹したものがったりと素材や技術へのチャレンジも様々な形になっているので、好みであるかどうかは別として非常に勉強になることもこのイベントの良いところなのだろう。
もちろん自分にとっては普段手にしてじっくりと眺めることのできないたくさんのボードを観察できたことや大好きで尊敬するシェイパーのみんなと知り合ったり、ハングアウトできたりすることが大きな財産と言えるだろう。。。
またしばらく姿が見当たらないと思っていたNaoだが、実は別棟で行われていたセミナーに参加していたと聞いたときには彼の熱心さと勤勉さにさらなる尊敬の念を覚えると共に、その底なしとも思える英語力に若干の嫉妬心も芽生えはじめた。。。笑
エクスポを訪れる人出も絶えることなく賑わいを見せているので、途中ちょっと抜け出してサーフィンなどと考える隙もなかった気がする。。。
そしてフッと時計を見てみるとあっという間にもう夕方だ。
今晩も至る所でバーベキューパーティーが行なわれるらしいく、マニのところにはあちらこちらからお誘いがかかっているよう様子だ。
昨晩から素晴らしい面子とハングアウトしているし、今日のイベントでも想像以上の出会いや収穫があった気がする。
さらに明日になればまた更なる出会いや新たな発見などが十分すぎるほどあるのは分かりきっているので、今日は深夜まであちらこちらに出歩きパーティーを梯子する気分でもない。
また状況や自分の性格から考えても途中で切り上げてホテルへ戻ることは不可能だろう。
今日のところは一足お先にホテルに戻らせていただき、時差ぼけの助けを借りて休むことにさせていただこう。
この旅で出会えた人々に感謝の気持ちをこめて、そして明日からの新たな出会いに期待を膨らませながら、テカテで乾杯!