10/11/2016

Mount Tsurugi***



 10月の山行は小屋閉め(劔沢小屋&剣山荘)直前の剱岳へ。今後山岳ガイドのお世話になり八ツ峰や長次郎尾根などのバリエーションルートからのアプローチをトライしたいので、まずは単独で別山尾根から登頂してきました。高度のある岩場の直登や高感度のあるトラバースなど危険箇所もある中、百名山ということもあり多くの方が登りシーズン中は渋滞で2時間待ちなどと聞いていたため、空いている時期を狙ってみました。






 交通の便が良くなり、北陸新幹線富山と立山経由で室堂へは自宅から5時間少々。初日は時折青空も見える霧雨の中、室堂ターミナルから雷鳥平、別山乗越を経由して劔沢へ。早朝に東京を出発し劔沢小屋に午後3時には到着。夕方晴れてくるとついに剱岳がその全貌を現しました。(一枚目の画像)
 劔沢小屋は定員64名のアットホームな山小屋。対応も丁寧でシャワーもあり食事も美味しくボリューム満点。自分の肉なしリクエストにも快く対応してくれました。結局ここに2泊することに。 宿泊者全員に登山ルートの注意点をしっかりと説明してくれます。また富山県警の方が食事の際に注意点を確認するという念入りな事故防止対策。



劔のモルゲンロート

予報どおり快晴の朝。しっかり睡眠をとり爽快な気分で目覚め、食事前に朝日に焼ける劔をしばし眺めます。日の出前に出発する人もいる中、自分は6時過ぎ一番ゆっくりと小屋を出発。

一服剱を超えるとぐっと前劔が近づきます

前剱を超えるといよいよ平蔵の頭の向こうに剱岳

前剱の門付近の岩場

頂上の少し手前には登りの難所カニのたてばい
写真中央右を青い服の人が登っています


途中下りの難所カニのよこばいを行く人を見上げます


通過してきた平蔵の頭方面


途中立山方面を振り返ります
中央やや左下には登り出した劔沢小屋
そして稜線が立山方面

山頂でハングルース
剱岳
2999m


 山頂からは360度最高の眺め。富士山やアルプス他様々な山が見渡せる中、特に富山の街と日本海が見えるのが印象的。コースはガレ場や岩場ばかりで高度感のある箇所も多少あり、またカニのたてばいやよこばいなど難所と言われる鎖場もありますが、特別苦労もなく大好きな急登や岩場を楽しみながら終始マイペースで一歩一歩進み気がつけば山頂でした。結局、自分にとって核心部となったのはやはり下りのガレ場。無理がきかない右膝に注意しながらゆっくりと進み、オーバーヒートしたら無理せず2、3回休憩を取り無事コンプリート。今年5本の指に入る天候(地元の方談)の中、人も少なくこの時期を狙ってきたマニアックな人ばかりの快適な剱岳でした。
 お昼過ぎには小屋に戻り、日差しの暖かな日向でただ山を眺めたり、同じくソロで登った方々と談笑タイム。夕食の前後も食堂や談話室で語らいのひと時を楽しませていただきました。


来週には雪山になり始める予報の剱岳
剱沢小屋前から


 昨日小屋入りし今日剱岳をめざす人たちには残念ながら、三日目の朝は曇り&強風。地元の山岳医の方や小屋の大将に今日の剱は不可能と言われていましたが、外に出れば誰でもわかる突風は20mクラス。自分も立山三山をめぐって帰る予定は中止し、まっすぐに室堂を目指します。

小屋の方々に挨拶をして室堂を目指します

流れゆく雲の切れ間からの雷鳥平

雷鳥も冬毛に変わり始めて冬支度

 室堂へは突風を交わしながら霧雨の降る道のりでしたが、何羽もの雷鳥たちが心癒してくれる良い最終日となりました。
 大好きな作家 新田次郎の「点の記」の舞台、そして立山修験では禁断の山だった劍嶽。明治時代に陸軍の測量隊や山の案内人が、また遥か昔の修験者がこの険しい山の頂を踏むための努力と苦労は計り知れません。そんな歴史から自分に取りひとつの憧れでもある山に登りました。今では当然のようにいつでも身につけているスマートフォンは家に置き去りにし(緊急用のガラ携は所持=連絡先を知るのは山小屋、ガイドや家族のみ)、ただひたすら山と向き合いながら自分自身を見つめ直し、景色に岩場に心奪われ。小屋では日常ではありえない「何もしないで良い時間」にビールを飲みながらただ山を見つめていたり、普段出会えない人たちとのその日だけのひとときを共有したり。ちっぽけな自分ですが今回の山行でも得られたものは多かったです。今回の山行で出会えたみなさんに感謝します。