ビンテージサーフボード。サーフィンを始めたのがティーンエイジャーの頃ではなかったこともあり、サーフィンを始めると同時にサーフボード・デザインの変化の面白さとサーフィン史にも興味が湧いた。特に興味を持った転換期のボードを集め出し、時代背景を踏まえた上での乗り味を楽しんだり、どの様にしてそうしたデザインが無まれたのかを探ってみたしていた。そんな中、運命の出会いなどから徐々に増えていったビンテージサーフボードのコレクション。気がつけば数も多くなり、ショップに飾っているもの、海の家のリビングで眺めて楽しんでいるもの、さらには実家の一部屋に積み上げられているものなど、すぐに乗ることができないものもたくさんある。そんな中、何本かのビンテージボードはワックスアップして、いつでも海に行けるよう待機してくれている。
時々こうしたビンテージ・ロングボードに無性に乗りたくなる。現代のシェイパーが作るモダンなクラッシックボードは、ファイン・チューンにより程よい重さでとても乗りやすく仕上げられている。比べるとこオリジナルの60年台のボードは重くて扱いにくく、テイクオフからボトムターン、ライン取りまでしっかりと考えて乗らないと思うように動いてくれない。だが、自分にとって実はそれがとても大切なことだったりする。乗り味を楽しむのはもちろんだが、波待ちしながらそのビンテージの歴史背景、当時のライディングスタイル、さらには当時のサーフィンカルチャーもイメージすることが出来る。家でビンテージボードを眺めながら好みのアルコールとともに味わうのもいいが、時々、海でビンテージと共に一期一会の波に乗りシンクルするのも乙なものである。
この日乗ったボードはゴードン・アンド・スミスのホットカール。転換期のボードデザインで、ラウンドの丸いボトムと尖ったナイフのようなレールが特徴の一本。なんといっても凝ったストリンガーが美しい。重さが影響してボードの走り出しがワン・テンポ遅れる感じで、そこから眠りから覚めたように一気にドーンと走り出す。重さ活かしたターンは、よりコアを使って重心を低く保つのが鍵。
冬の寒さが身に染みる雨降りの日。波は小さく短い時間ではあったが、このボードのおかげでとても心地良いひとときになった。